知識集約型社会を支える人材育成事業 インテンシブ・イシュー教育プログラムのモデル展開

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インタビュー

教員インタビュー

小泉 佳右

小泉 佳右 千葉大学大学院国際学術研究院 准教授

小泉先生は、「クロスメジャープロジェクトI」(CMP I)の一つ「『身体』を測る」に加え、セルフデザインギャップタームにも、より深い実験手法を学ぶための2つのプログラムを開講されました。その狙いなどについて伺いました。

自身の中心的な研究テーマや、最近のご関心を教えてください。

いろいろとやりすぎていて中心が何なのかを決められない部分がありますが(笑)、比較的長く興味関心を持って研究を行っているのは、幼児期の身体活動と生活リズムとの関係です。昼間にしっかりと身体活動をすることで、適度な疲労感により夜の入眠が促され、睡眠時間も取れるということですね。ただ、生活リズムの半分くらいは身体活動や社会的な要因で決められるのですが、一方で光に対する刺激の受け方など、生まれ持った遺伝的な要因も半分くらい影響していると言われています。現段階では、その部分を考慮に入れながら試行的な実験をしています。

国際教養学部の中に、他に運動生理学、スポーツ科学を専門とする教員は多くないが、そこに難しさはあるか。

各教員の守備範囲が広くなるのは仕方がないことで、いろいろやらないといけないので大変ですが、そこは自分のトレーニングだと思っています(笑)。もしかしたら教員の在り方もいろいろあって、特定の領域を深く探求していくというものだけではなく、様々なものを結びつけていくのも一つかなと最近は思っています。特に国際教養学部では、他の先生方もいろいろなフィールドの活動を横断的に行っているので、私もそれに倣おうという気持ちです。

広い守備範囲をカバーする必要がある中で、学生の教育面で工夫されていることは。

最近、オンラインのオンデマンド型の教材提供も主流になってきたので、動画を多めに作っておいて、学生それぞれの興味や関心に応じて、見たいものを見てもらえるような状況にしています。昨年度はその一つとして、本来であれば実験室で行われるべき実験の内容を、できるだけ臨場感をもって体験的に学習してもらえるようにVR教材を作りました。それを見て本当に興味があれば私のところにメジャープロジェクト(MP:卒業研究)にきてもらって、実際に実験をやってもらうという位置づけにしました。

今年度クロスメジャープロジェクトI(CMP I)の授業が大きく変わったが、先生はどのような授業を。

選択的反応時間の実験を体験する様子 選択的反応時間の実験を体験する様子

私の授業では、1つは自律神経機能の測定、もう1つは選択的反応時間の測定という、2つの実験を体験してもらいました。自律神経に関しては、過去に他研究室のMPで扱った卒業生もいたため、基礎的な学習をする上でも学びになるだろうと思い、紹介しました。選択的反応時間は、例年運動パフォーマンスの調査や心理系の実験を希望する学生がいるため、その一つとして体験してもらいました。以前のCMP Iに比べると教員の専門性をダイレクトに学生に伝えられるようになったので、その部分では良い改革になったなと思います。

新しくできた3年次のセルフデザインギャップタームでも、2つの特別プログラムを提供されていますね。

唾液中コルチゾールの分析を体験する様子 唾液中コルチゾールの分析を体験する様子

身体活動量の測定と評価を実際に体験してもらうものと、科学実験の一つとして唾液中コルチゾール分析を行うものです。いずれも総合科学メジャー以外の学生にも有益な示唆を与えられるものになるのではと考え、提供することにしました。今回のプログラムでは、データの収集や分析作業もやってもらおうと思っています。得られたものを自分の興味関心に基づいて分析して、最終的な結果を出すという一連の実験活動は、社会に出た時に活用できる体験にもなるかなと思います。
これらギャップタームのプログラムにより、昨年度まで3年後期のクロスメジャープロジェクトII(CMP II)の授業の中で扱っていた内容を前倒しで教えることができるようになりました。それにより学生はMPを探求していく上での余裕ができ、より深みのある課題解決ができるのではないかと期待しています。

最後に、今後のII-BEAT事業に期待することを教えてください。

学生にとっては、セルフデザインギャップタームを設けることで、より主体的に課題に関われる環境が整ったと思います。学生時代だからこそ可能な挑戦や体験をして、課題の発見や解決方法の引き出しを増やしてもらうことを期待しています。また、CMP I・IIなど、教員が連携して授業を実施することも増えたように感じています。今後は研究面でも特定の課題に対して連携し、教員間の新しいプロジェクトをつくることができれば面白いかなと考えています。

小泉 佳右(こいずみ けいすけ)

千葉大学大学院国際学術研究院 准教授。博士(教育学)。植草学園大学、千葉大学教育学部などを経て現職。専門は運動生理学、スポーツ科学。「ヒト生活リズムの確立と身体活動との関係」「Active recoveryの生理学的背景」などについて研究を行う。また専門競技は野球で、学内では「野球観戦に活きるデータ科学」「コミュニティにおけるスポーツ・イベント運営の実践」などの授業も開講している。主な論文に「1日60分以上の身体活動をする幼児の時間ごとの活動特性と体温概日リズム」(千葉大学国際教養学研究, 4, 147-155, 2020)、「幼児期における生活リズムを確立するための、身体活動の有効性―唾液マーカーによる概日リズム評価を用いて―」(第32 回若手研究者のための健康科学研究助成成果報告書, 70-74, 2017)、「Active recovery effects on local oxygenation level during intensive cycling bouts」(Journal of Sports Sciences, 29, 919-926, 2011」など。